Agentforce Vibesを使ってみた|Salesforce実装の強みとClaude Codeとの使い分け【2026年版】
Agentforce Vibes とは、Salesforce が提供する開発向けのAIエージェントです。組織のメタデータを読んだうえで、Apex や Lightning Web Component、項目やページレイアウトを自然言語の指示から作ります。
Salesforce の項目追加は、単純作業のわりに時間を取られます。項目定義表を1行ずつ見ながら作り、ページレイアウトに並べ、権限を開き、ヘルプテキストを書く。急ぐほど、最後の1つが空欄のまま残ります。
わたしたちは実際の案件で、設計資料をもとに商談まわりの項目追加と画面整備を Agentforce Vibes で進めました。この記事は、そのときの進め方と、使って良かった点、つまずいた点の記録です。汎用のコーディングAI(Claude Code)との性格の違いもまとめました。
- Excel の項目定義を貼り付けるところから実装までの、実際の進め方
- 指示していないのに Agentforce Vibes が整えてくれた3つのこと(ヘルプテキスト・セクション配置・標準項目の実在確認)
- 汎用のコーディングAI(Claude Code)との性格の違いと、使い分けの方針
- つまずいた点と対処、2026年時点の料金と無料で試す方法
目次
- Agentforce Vibes とは何か
- 用語ミニ辞典
- 今回つくったもの
- 実装の進め方:Excelを貼り付けるところから
- 言わなくてもやってくれた3つのこと
- 失敗してから直すのではなく、先に聞いてくる
- Claude Code との違いと使い分け
- つまずき&FAQ
- 次に試すこと
- まとめ
用語ミニ辞典
本文は正式な用語で書きます。Salesforce に慣れていない方は先にここを読んでください。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| Agentforce Vibes | Salesforce 公式のAI開発環境。ブラウザで動くIDE版と、VS Code などに入れる拡張機能版がある |
| Vibe Codey | Agentforce Vibes のなかで実際に手を動かすAIエージェントの名前 |
| 項目レベルセキュリティ | 項目ごとに「誰が見られるか・編集できるか」を決める設定。ここが閉じていると画面に出ない |
| ページレイアウト | 項目を画面のどこに、どの順番で並べるかの定義。項目を作っただけでは画面に出ない |
| LWC | Lightning Web Component の略。Salesforce の画面部品を作るための仕組み |
| MCP | AIツールが外部のシステムを操作するための接続規格。Salesforce DX MCP Server 経由で組織を操作する |
Agentforce Vibes とは何か
Salesforce が 2025年10月に発表した、企業向けのAIコーディング環境です。汎用のコーディングAIとの違いは、Salesforce 組織を見てからコードを書く点にあります。
提供の形は2つです。
- Agentforce Vibes IDE:ブラウザで動くクラウド版。設定画面から起動でき、SFDX プロジェクトの生成と組織の認証が済んだ状態から始まります
- Agentforce Vibes 拡張機能:VS Code、Cursor、Windsurf などに入れて使う版
組織側の権限設定から VS Code への接続までの手順は、Agentforce Vibes セットアップ手順【日本語版】に別途まとめています。拡張機能版を使う場合は、先にそちらを済ませてください。
料金は2026年6月から有料になりました。従量課金の Flex Credits(¥60,000 / 100,000クレジット)と、定額の ¥15,000 / ユーザー / 月 の2本立てです。Developer Edition と Salesforce Foundations の無料枠で試せます。選ぶモデルの違いは料金に影響しません。
2.0 で変わったこと
2026年4月の TDX で Agentforce Vibes 2.0 が発表され、Summer '26 で提供されています。
| 変わった点 | 内容 |
|---|---|
| 計画してから動く | 複雑な作業では、構造化した実装計画を立ててから着手する。着手前に確認の質問をする |
| Skills と Rules | 再利用できる指示を Skills としてまとめ、守らせたい規約を Rules として適用できる |
| モデルを選べる | Claude Sonnet、Claude Opus、GPT-5 を1か所の選択画面から選ぶ |
| LWC のライブプレビュー | Lightning Web Component の見た目をその場で確認できる |
| React アプリの生成 | 画面を作り込みたいケースに対応 |
| マルチタブ | 複数の作業を並行して進められる |
Salesforce は 2.0 について、Anthropic Agent SDK をネイティブに統合したと説明しています。第三者の検証でも、呼び出されるツール名が Claude Agent SDK のドキュメントと一致することが報告されています。汎用のコーディングAIの土台に、Salesforce の知識とガバナンスを載せた構成、という理解でよさそうです。
セキュリティ面は Einstein Trust Layer の適用範囲で動きます。第三者のLLM側でのデータ保持はゼロ、個人情報は自動でマスキング、AIとのやり取りは監査ログに記録される、というのが Salesforce の説明です。お客様の組織を触る立場としては、ここが明示されているのは大きい点です。
今回つくったもの
営業管理をSalesforceに載せる案件で、設計資料をもとに商談オブジェクトの項目追加とページレイアウトの整備を行いました。設計資料は Excel の項目定義表です。

新しく用意したものはありません。ブラウザから Agentforce Vibes を開くだけで、対象の組織につながった状態で始まります。ローカルへのインストールも、MCP の設定も不要でした。この「調達が軽い」点は、試すハードルを下げるうえで効きます。
実装の進め方:Excelを貼り付けるところから
設計書をきれいに整形してから渡す、ということはしませんでした。結論から言うと、雑に投げて、聞かれたことに答えていくやり方で問題なく進みました。

- Excel の項目定義表から、必要な範囲のセルをまとめてコピーする
- そのままプロンプトに貼り付け、「これを追加してください」と指示する
- まず一覧化してもらう。ここで認識のズレが見つかる
- 標準項目とカスタム項目のどちらで実現するかを判別してもらう。標準項目で本当に足りるのかも、この段階で確認してもらう
- もう一度まとめ直してもらい、「その方針でお願いします」と伝えて実装させる
選択肢の値のように、設計資料で決まっていない箇所は、作業中に質問が来ます。その場で答えれば先へ進みます。
手順4が効きました。項目定義表には、実は標準項目で足りるものが混ざっています。Agentforce Vibes は組織のメタデータを読んでいるので、「これは標準の項目で実現できます」と指摘できます。ここを人間が一つずつ調べると、それだけで半日が溶けます。
言わなくてもやってくれた3つのこと
Agentforce Vibes の良さは、指示の範囲を勝手に広げないまま、作るものの品質は落とさないところにあります。出来上がった画面を見ながら気づいたのが、次の3点です。
1. すべての項目にヘルプテキストが付いていた
一番驚いたのはここです。ヘルプテキストを付けてほしい、とは一言も指示していません。それでも、作成された項目のすべてにヘルプテキストが入っていました。
ヘルプテキストは、Salesforce の項目設計では「入れるべきだが、後回しにされがちなもの」の代表です。人が作ると、急ぎの案件ほど空欄のまま残ります。運用が始まってから「この項目、何を入れるんでしたっけ」という問い合わせを生むのは、たいていこの空欄です。
Salesforce に特化したツールだからこそ、言われなくても当然やる作法として組み込まれているのだと思います。汎用のコーディングAIに同じことを期待するなら、こちらから毎回指示する必要があります。
2. セクションごとに分けてレイアウトし直してくれた
先に人の手で作った画面があり、その配置を直す作業も任せました。結果は、セクションごと・項目のジャンルごとにきちんと分けた配置になって返ってきました。
項目名から性質を判断して、関連するものをまとめています。「この項目とこの項目は同じ塊」という判断ができるのは、Salesforce の画面設計をひととおり知っているからです。Salesforce に特化しているだけあって、こうした微調整はかなり得意でした。
3. 標準項目で実現できるかを先に確かめてくれた
前章の手順4のとおりです。指示の中身をそのまま作るのではなく、組織に何があるかを見てから作るので、不要なカスタム項目が増えません。カスタム項目は増やすのは簡単ですが、減らすのは大変です。入り口で止めてくれる価値は、運用が長くなるほど効いてきます。
失敗してから直すのではなく、先に聞いてくる
動きの性格として、もう1つはっきりした違いがありました。作業を始める前に、足りない情報を確認してくることです。
汎用のコーディングAIは、まず実行します。失敗したらエラーを読み、原因を推定して、もう一度試します。動き自体は速いのですが、失敗を前提にした進み方です。
Agentforce Vibes は、カスタム項目を追加するのに何が必要かを最初から知っています。だから、足りない情報を先に聞いてから実行に移ります。「作ってみたけれど、この情報が無いので入りませんでした」という空振りが起きにくい進み方です。
Claude Code との違いと使い分け
社内では Claude Code を日常的に使っています。同じ作業を任せたときの性格の違いは、はっきり出ました。

| Agentforce Vibes | Claude Code | |
|---|---|---|
| 作業範囲 | 言われたことだけを確実にやる | 必要と判断すれば周辺まで手を入れる |
| Salesforce の作法 | ヘルプテキストやセクション配置を自動で整える | 指示しないと整えない |
| 進み方 | 足りない情報を先に聞いてから実行 | まず実行し、失敗したら原因を推定して直す |
| 質問のしかた | 1問ずつ | まとめて聞くことが多い |
| 向いている場面 | 保守開発、既存組織への追加実装 | 前工程の整理、仕様の詰め、ゼロからの試作 |
たとえばカスタム項目の追加を頼んだときです。Claude Code は「では営業ユーザーが見えるように、項目レベルセキュリティとページレイアウトの調整までやっておきます」と動いてくれます。親切ですが、それが必要とは限りません。知らないうちに余計な変更が入るリスクがあります。
Agentforce Vibes にはその心配がありません。言われたことだけを、きっちりこなします。お客様から依頼を受けて保守開発をしている場面では、頼んでいない箇所を触られないことのほうが価値があります。職人にお願いしている感覚に近いです。
一方で、指示の粒度は細かくなります。慣れていない担当者が使うと、指示を足し続けることになり、効率が上がりません。ここが次章の課題につながります。
つまずき&FAQ
Q. 項目を作らせたのに、画面に表示されない
項目の作成とページレイアウトへの追加は別の作業です。「作ってください」だけでは画面に出ません。「ページレイアウトにも追加してください」と明示的に指示してください。指示の範囲を広げないのは、前述のとおり長所と裏表の関係にあります。
Q. 項目レベルセキュリティが設定されていない
これも同じです。項目を作る指示だけでは、項目レベルセキュリティは触られません。「営業ユーザーの参照・編集を有効にしてください」まで指示に含めてください。運用で使うプロファイルや権限セットを先に決めておくと、指示が1回で済みます。
Q. 項目が画面に出ない原因を調べさせたら「キャッシュが残っているだけです」と言い切られた
実際に起きた出来事です。画面を読み込んでも項目が出ず、原因を調べさせたところ「前のキャッシュが残っているだけです」と断定され、それ以上考えてくれませんでした。実際の原因は、標準ページ側の設定と項目レベルセキュリティでした。
原因の切り分けは、次の順で人が見に行くのが早いです。
- ページレイアウトに項目が載っているか
- 項目レベルセキュリティが対象プロファイルに開いているか
- 画面が Lightning レコードページ(標準ページ)で、そちらの設定が優先されていないか
AIの断定をそのまま受け取らず、上の3点を自分で確認してください。
Q. 質問の往復が多くて時間がかかる
「不足している情報をすべて先に列挙してください」と最初に依頼してください。それでも1問ずつ来る場合は、次章のハイブリッド案が効きます。
Q. 無料で試せますか
試せます。Developer Edition 組織か、Salesforce Foundations の無料 Flex Credits の範囲で利用できます。Developer Edition の割り当ては月110リクエスト・月150万トークンです(2026-05-31 以降の割り当て)。本格利用では、従量課金の Flex Credits か、定額の ¥15,000 / ユーザー / 月 を選びます。
Q. 本番組織で使って大丈夫ですか
生成したコードや設定は、明示的に指示しない限り本番へデプロイされません。設定 > Agentforce Vibes Extensions から機能自体を無効化することもできます。ただし、自動承認をすべて有効にすると、出力を確認しないまま保存とデプロイまで進みます。 本番組織で使うなら、自動承認はオフのままにしてください。
Q. ブラウザのIDE版と、VS Code の拡張機能版はどちらを使うべきですか
まず試すならIDE版です。インストールも認証も不要で、対象の組織につながった状態から始められます。今回もIDE版で進めました。既存のリポジトリやローカルの開発環境と組み合わせたい場合は、拡張機能版を VS Code や Cursor に入れる形になります。
Q. 生成されたコードはそのまま使えますか
レビューは必要です。特に CRUD と項目レベルセキュリティ、共有設定の観点は、人が確認してください。Salesforce 公式も、生成コードのレビューを前提にしています。
Q. データは外部のAIに学習されませんか
Einstein Trust Layer の適用範囲で動きます。第三者のLLM側でのデータ保持はゼロ、個人情報は自動でマスキングされ、AIとのやり取りは監査ログに記録される、というのが Salesforce の説明です。
次に試すこと:前工程を Claude Code、実装を Agentforce Vibes に
今回の反省は、質問の往復に時間を取られたことです。原因は、Agentforce Vibes に渡した入力が、そのままでは情報不足だったことにあります。
そこで次はこう進めます。
- 設計資料をまず Claude Code に読ませる
- 「Agentforce Vibes にカスタム項目の追加を指示したい。不足している情報は何か。実際に引き渡すプロンプトと Excel ファイルを作ってほしい」と依頼する
- 出てきたプロンプトと Excel を、そのまま Agentforce Vibes に渡す
前工程の「足りない情報を洗い出す」作業は、まとめて聞いてくれる Claude Code が得意です。実装の確実さは Agentforce Vibes が得意です。得意なほうに寄せる、という考え方です。
初動の試行では、これまでの会話内容を渡すためのプロンプトを Claude Code に作らせて投げたところ、新規オブジェクトの作成しか行われませんでした。項目定義を Excel ファイルの形で渡すところまでは、まだ試せていません。結果が出たら、続編として書きます。
まとめ
- Agentforce Vibes は、Salesforce 組織のメタデータを見てから実装するAI開発環境です。ブラウザから開くだけで、組織につながった状態で始められます
- 指示していないのに、作成した全項目にヘルプテキストが入っていました。セクション単位のレイアウト整備、標準項目で足りるかの事前確認も、こちらから言う前にやってくれます
- 言われたことだけを確実にやる性格です。保守開発では、頼んでいない箇所を触られないことが利点になります
- 一方で、ページレイアウトへの追加と項目レベルセキュリティは別途指示が必要です。原因調査で断定されたときは、人が確認してください
- 前工程の整理は汎用のコーディングAI、実装は Agentforce Vibes、という使い分けが次の検証テーマです
Salesforce の実装を任せるなら、Salesforce の作法を知っているツールに任せるのが確実でした。
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